八光流木鶏塾について☆その2・技じゃない

先月から広報のお手伝いをさせていただいている【八光流木鶏塾】さんのお話の第2回です。

冒頭の動画は先月から始まった八光流木鶏塾が運営する
【木鶏塾チャンネル!】というYOU TUBEチャンネルで
第1回目のこの動画は、実際の木鶏塾の普段の稽古にお邪魔して
門人の皆さんにインタビューさせていただきました。

さて、前回のブログでは、映画『YOSHI王-誕生編-』でプロデューサーと武術監修を勤めてくださった
八光流木鶏塾代表の垣本雅史(号・秀峰)さんが私(日浦)の40年来の友人であり
映画の武術監修として俳優さんたちに武術家や喧嘩屋としての所作や佇まいを指導した。しかも短期間で。

その際の彼の指導方法が独特な指導方法だったということをお伝えしました。

具体的な方法がこうだった、ということはここでは書きません。
私はその道の人ではありませんから不正確なことをお伝えすることになりますので。
ただ、その時に感じたことはお伝えできますので、それをお伝えしたいと思います。

まず、所作って一口に言っても時代劇とかなら
武士で筋目のいい家柄で大名なのか藩士なのか、あるいは旗本なのか、浪人なのか
そういう階級制なんかがありますから、その辺から指導することはできるかもしれません。
しかし、「日本古来からの武術の家柄」の人間でしかも「架空」の武術家だったり
「めちゃくちゃ強い喧嘩屋」だったり
まぁ、最初からセオリーのある「所作」ではないわけです。

私たちはまず「架空の武術」の成り立ちや何がコンセプトで、どういう経緯で誕生したのか、など
細かい設定から考え始めました。

人間でいえば「履歴書」のようなモノです。
細部までではありませんが、大雑把にはこういう武術なんだ
というものを二人で意見を出し合いました。

なぜ「意」という漢字を使っているのか
「天」という字を加えたことで
よりビジュアル的にも「意天流」のアイデンティティーがハッキリとしてきたり。
そこから技の流れや、具体的なシーンのアクションを組み立てて
最終的にそこから逆算して流派の全容を創り上げていく。

同様に「髑髏会」という「喧嘩集団」の成り立ちや歴史
獅子堂 骸(ししどう ガイ)という人物の履歴を考え
さらに誰が最初に髑髏会に入り、誰はどういう流れで参加したなど
そういう細かな設定を確定させていくことで
それぞれの人物の人間像から性格や所作が生まれて行きました。

そして、そこへ演じる俳優それぞれの体つきや歩き方を見て
垣本さんが調整していくわけです。

その作業は正に「調整」という言葉がぴったりな作業でした。

それぞれの俳優に彼らの特徴に合わせて
垣本さんから動きの指示や宿題が出されます。
その習熟度を毎回チェックしながら、その都度違う「指示」と「課題」が出されます。

例えば、変な話ですが、格闘技や武術をやっている人間の目でいると
歩き方を見たら強そうか弱そうか「わかる」んですね。
本当に強いか弱いかはやってみないとわからないんですけども
とにかく見た目でわかる部分はあって
特にそれがよくわかるのが「歩き方」なんです。

ああ、この人バランスよくないな
あ、この変な癖のある歩き方は動きに出るよね

なんて、何となく思ってしまったりします。
例えば、タイの国技「ムエタイ」は戦いの前に「ワイクー」という儀式を行います。
戦士がリングに上がると独特の音楽とリズムに合わせて
リング上でデモンストレーションを行うわけですが
これを見るとその選手の実力が見えたりします。
相撲でも土俵入りや取組前の四股踏みを見ると実力がわかったりします。

下半身の出来上がり具合、腰のキレ、体捌き、色んな要素から
それぞれの動きを類推できるわけです。

なので、思った以上に歩くという所作には色んな情報が詰まっているんです。
それだけに、歩き方にはとても気を使いました。
やはり、アマチュアレスリングの選手と武道の達人の歩き方は違うんです。

では、モデルさんのようにひたすら「歩き方」の練習をしたのか?

というとそんなことはないんですね。
練習では、チェックとして歩いてもらうことはありますが
「歩き方」の練習そのものはほとんど言っていいほどしていませんでした。

歩き方の中に足りない要素を見つけては
特定のトレーニングや必要な動きを型練習のように繰り返し行ってもらい
また歩いてチェックしてみて、まだ足りないと別な要素を加える。
そんなことを繰り返していたのです。

結果的に俳優さんたちは皆さん、それぞれのキャラクターの所作を身につけていきました。

そこで私が「面白いな」と思ったのは、垣本さんの【指示の仕方】でした。

垣本さんの指示は、的確なのですが私からすると不思議に見えました。
私自身、高校・大学と柔道部で過ごし、たくさんの後輩たちを指導してきた
指導者という側面もありますし、
実際、20代、30代は格闘技のインストラクターとして
ボクシングやキックボクシング、護身術や柔術の指導をしていました。

その中では、例えば「ストレート」というパンチを教えるなら
綺麗な形になるまで「ストレート」というパンチを練習してもらうのが当たり前でした。
「ミドルキック」なら「ミドルキック」を何度も蹴ってもらい
「もう少し高く」とか「もっと軸足を踏み込んで」とか
【技】そのものを指導していくのが当たり前だと思っていました。
というより、それが普通なら当たり前なんです。

ところが【垣本さんの指導】は違っていたんです。

「歩き方」を指導するのに特定の型を稽古してもらったり
ちょっとしたストレッチやごく簡単な筋トレを指示したり。
一見すると無関係に見えることをその都度指示していきます。

そして最後に「チェック」として歩いてもらうと
「歩き方」という所作が仕上がっている!

そう。【技】を習得させるために【技】そのものを稽古させるのではなく
【技】に必要な、それも「その人にとって必要な要素」をチョイスして指示する。
全員が同じメニューをこなしたら出来上がる【Ready-Made】ではなく
まさしく、その人のためだけの【Order-Made】の指導を行っていくので
上達が早いんですね。

いや、映画のスケジュールが時間を与えなかったから仕方なくなんでしょうけども(^^;;;;;
※ここ、笑うところですw

何はともあれ、映画の撮影が始まると彼の指導の結果として
【アクション】パートは素晴らしい仕上がりを見せてくれました。
もちろん、俳優各自の努力の賜物であり、
彼らと撮影スタッフの技術が合わさったからこその出来栄えです。
また編集段階での映像効果や音響が加味されたことで
映画としての出来栄えになったことはいうまでもありませんが
しかし、それ以前に俳優たちに取り組むべき課題と
進むべき方向性としての道を示したのは、紛れもなく垣本さんでした。

彼の監修によってアクションがどのように仕上がったのかは
当然このブログの文章でお伝えできるものではありません。
映画YOSHI王予告編に片鱗はありますが、やはり映画本編をみていただくことが
この文章に納得していただける一番の方法だと思います。
後、この撮影中の苦労話?は空手パートの監修をしていただいた
真正会空手の《松井厚師範との対談動画》でも語られていますので
そちらをご覧になっても参考になるかと思います。

映画に関しては昨年秋に劇場公開を一度行っていますが
一番直近でいうと4月に上映する機会を設けさせていただきますので
是非、そちらでご覧いただければと思います。

映画のことはさておき。。。

そうそう。結局映画のことばっかりになってしまいました!
映画の打合せや何かでこの1年、木鶏塾を訪れる機会は格段に増えまして
早めに行くと稽古がまだ終わっていなくて見学させて貰う機会がたくさんありました。
私自身、「自称・武術オタク」なものですから稽古自体に興味津々なわけです。
技そのものにも勿論興味はあって見学させて頂いているわけですが
それよりも私の興味は「稽古」そのものに移っていきました。

いや、私が想像していた「古流柔術の稽古」とは
【八光流木鶏塾】の稽古は違っていたんです。

門人の皆さんは勿論真剣に稽古されているんですが
でも決して怖い顔とか険しい顔でやっているのではないんです。
どう見ても楽しそうなんです。
何なら笑顔や笑いさえ起きている。
その模様は、冒頭の【木鶏塾チャンネル!】第1回目《お稽古編》
の動画を見ていただくとお分りいただけると思います。

何だろう?この不思議な空間は?

そう思って見ているとあることに気づきました。
その大分後になって「実は12人目の師範がウチの道場(木鶏塾)から誕生するねん」て聞かされて
ああ、なるほどねーと思ったんですね。

ということで、そのお話は次回に!(続くんかい!w)

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