令和3年3月13日(土)、残念ながら梅田の空はターコイズブルーとはいかなかった。
前日から続く寒冷前線の通過により、空はほぼ雲で覆われ、傘を持つか逡巡する程度の小雨が断続的に降り続いた。
傘を忘れた私はJR大阪駅を降りて足早にシネ・リーヴル梅田のある「梅田スカイビル」に向かった。
4階のフロントに行くと宣伝の田辺氏が待っていてくれていて、マスコミ席へと案内してくれた。

しばらくして、映画『ターコイズの空の下で』に主演した柳楽優弥くんとKENTARO監督による舞台挨拶がはじまった。
本作は、日本・モンゴル・フランスの3カ国合作映画というだけでも異色だが監督の経歴も異色といえる。
海外で育ち4カ国語を操り、『キス・オブ・ザ・ドラゴン』『ラッシュアワー3』など俳優としても活躍した才人・KENTARO監督の長編初監督作品だ。

《あらすじ》
モンゴルの草原で未知の自分と出会う国境と世代を超えて魂が響き合うロードムービー
裕福な家庭で甘やかされて育ち、道楽生活を送る日本人青年タケシは、実業家の祖父により外モンゴルの草原へと送り込まれ、終戦後に生まれて以来、再会することが叶わない祖父の娘を探すことになる。モンゴル人の馬泥棒・アムラをガイドに、ミスマッチなコンビは果てなく広がる空の下、現実離れした大自然へと旅立つ。運転手付きの観光気分で来たタケシだったが、ラグジュアリーな日本の生活とはかけ離れたアムラのポンコツバンに揺られながら、想像もしなかった鮮やかで生命力に溢れる世界に分け入っていく。そんな中、アムラが逮捕されてしまい、タケシは着の身着のまま人気のない荒野に一人取り残される。途方に暮れるタケシだったが、その先には忘れられない出逢いと経験が待ち受けていた。

タイトル通り、作品は全体としてターコイズブルーで統一されていた。
日本語よりもフランス語の方が得意というKENTARO監督の画作りは、日本人監督の写実性に比べて、スタイリッシュで印象的で大胆なカット割が目立つモノだった。
しかし、それらは無駄がなく、思いが伝わってくる作品となっている。

柳楽は、何カ国もの言語が飛び交う合作映画が初めてとのことで、その作品がようやく観客に届けられることを素直に喜んだ。
シャイで口下手な柳楽とKENTARO監督の2人だったが、それでも司会者の投げかける問いに応えようと一生懸命に場を盛り上げてくれた。

印象的だったのは、映画タイトル『ターコイズの空の下で』に決めたキッカケの話。
KENTARO監督曰く、モンゴルの詩人が「空」のことを「ノミン=ターコイズ」と表現したことだったという。
モンゴルは首都ウランバートルで海抜1400mあり、ロケ地となった地方に行くと2600〜3000m程の高さになる。そのどこまでも続く空は美しく、夜は星がプレネタリウムのように綺麗に見えて、それでいて届きそうな程近い。
そんな美しい空の下での人間模様を描きたかったと監督は語った。

さらにKENTARO監督は今回柳楽と仕事ができたことについてこう語った。

彼を作った状態とかじゃなくてね、一番ピュアな状態で見せる事ができたのはとても嬉しかったですね。演技っていうのは作って一方的に見せるもんじゃなくて、やっぱり役者と役者の間にできたエネルギーの中でね、作るものがあるんで、それに彼が素晴らしくできてね、結果はこれから観られるんですけど、そういう彼を一緒に体験できてとても嬉しいです。

舞台挨拶の中で、監督は柳楽のダンスというか身体表現の巧さに言及すると

昨日まで撮影していたという『浅草キッド』でタップを相当練習していたといいうことでこの舞台挨拶で披露するのか?という流れになりかけたが、監督が言いたかったのはタップだけのことではないということになり、作品中での見所の紹介ということで終わり、柳楽は胸を撫で下ろした。

今作は、柳楽演じるタケシとモンゴル人の馬泥棒・アムラの二人によるロードムービー。そのアムラからのビデオメッセージが映し出され、モンゴルでの彼の人気ぶりと素晴らしい人柄なども紹介され、本作での彼の存在の大きさを改めて感じられた。

最後に二人からこれから鑑賞する皆さんへのメッセージが語られた。

柳楽優弥
ええーっとこう、なんかドイツのマンハイムでの満席の感じを思い出すような、こうなんかとっても嬉しい気分です。精神的豊かさみたいなもので成長していくタケシの姿を楽しんで見ていただきたいなと思ってます!『浅草キッド』楽しみにしていてください!

KENTARO
ちょっと変わったファンタジーみたいなのがいっぱい入った寓話みたいな映画なんですけど、もしかしたら、しょっちゅうあるような映画じゃないと思うんですよね。皆さんの感想を聞きたいって気持ちがほんとあります。

これから観られる方、すでに観られた方、監督が皆さんの感想を聞きたがっておられました。公式Twitter宛に感想を呟いてみられてはどうだろうか。監督の目に止まるかもしれない。(文・取材 / 岩崎与夛朗)

《公開情報》
3/12よりシネ・リーブル梅田、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸ほか
4/9よりシネ・リーブル神戸にて順次公開